補中益気湯と十全大補湯について
この2種類の漢方薬の処方は、効能効果を読むととても良く似たことが書かれています。含まれている生薬も同じものが多く配合されています。
ざっくり言えば、どちらも元気がなくなって疲れている人のお薬です。(元気な人をさらに元気にするお薬ではありません。)
では、どのように使い分けるのでしょうか?
疲労のお薬は症状によって違うお薬をお勧めする場合もありますが、この2種類が代表的な処方です。
この2種類は、「元気が先か、ものが先か」という、「鶏が先か卵が先か」のような答えをはっきり出すのが難しいくらい似たところがあります。
エネルギーが足りなくて、食べれなくて(食べれるけど消化不良なども含む)、衰えた・疲れた→補中益気湯
食べれなくて、エネルギーが足りなくなって、衰えた・疲れた→十全大補湯
という感じで結果は同じことなのです。
補中益気湯は、虚弱な人はもちろんのこと、もともとは体力があっても過労や手術などで一時的に疲れている人、精神的なストレス疲労(加味逍遥散や抑肝散加陳皮半夏や女神散など別の漢方薬をおすすめすることもあります)に使います。
十全大補湯は、大きな筋肉も衰えて弱弱しい人や、冷えがある人の疲れに使います。術後の体力回復を早めるためにも使います。
どちらを選んでも良さそうな時には、
気疲れの方が強ければ補中益気湯、
血流が悪く冷えがあれば十全大補湯
という感じでしょうか。
ただし、注意していただきたいのは、疲労は甲状腺や腎臓・肝臓などの重大な病気のサインの場合があることです。
いつもとは違う怠さを感じたり、これまでと同じことをしているのに急に疲れるようになったり、疲労の他に痛みや体重の増減(一般的な成人の体格なら4~5㎏の増減、小柄な人なら半年で5%以上の変化が目安です)など別の症状を伴っていたり、休んでも治らず続くようであれば、お住いのお近くの医師や薬剤師にご相談ください。
参考までに、補中益気湯と十全大補湯の効能効果を載せておきます。
たまに患者さんからご質問をいただくのですが、この効能効果に書かれている内容の全てが当てはまらなければ、この処方を服用してはいけないということはないです。
見方としては、「○○○○の諸症の、×××、△△、・・・」とあれば、○○○○の部分が主な前提条件で、その次に書かれている×××か△△、・・・の全ての症状が無くても×××の一つの症状が当てはまれば、使う場合があります。
補中益気湯
体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:
虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒
十全大補湯
体力虚弱なものの次の諸症:
病後・術後の体力低下、貧血、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え